GRA 公式ブログ

オートバイにいつまでも楽しく安全に乗れる環境作りと人材育成を目標にしている NPO法人:GRAのブログです ( 公式Webサイト : http://gra-npo.org )

安定限界トレール量、知っていますか? (その2)

この講義の主題は 「安定限界トレール量」です。
それは、オートバイの理解だけでなく、ライディングやセッティングの理解にも大変に役立つ事です。

しかし、この大切な要素を正しく捉えようとせず、多くの専門誌は、昭和30年代から続く古い理論にしがみついている様に見えるのは残念な事です。

では今回は、「安定限界トレール量」はタイヤ自体が向いている方向へ進もうと(直進)する力、つまり「直進安定性」(方向安定性とも言う)との関係から解説します。


 
【 トレール(量)と直進安定性の 神話 】

オートバイの解説本や資料には、「トレール量が大きいと直進安定性が高い」とか、「アメリカンタイプのオートバイは直進安定性を高めるためにトレール量が大きい」などと書いてあります。

果たして、これは本当だろうか?
構造を簡単にした図で考えてみましょう。

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これらの図は、台車などで使われる二種類の車輪の図です。

(A) の形式の車輪は、台車に固定された “ 回転軸 ” (この軸を中心にして車輪の向きが変わる)が車輪(車軸)の真上にあり、回転軸の延長と地面が交わる点と車輪の接地点が同じために、トレール(量)は 0 です。

一方、(B)の形式では、トレール(量)が常に確保されます。
そのため、(A) の形式では 車輪の向きが安定しませんが、(B)の形式ではトレールがついているので、車輪の向きはとても安定します。

これらは、実際の台車でも応用されている事で、真実の事実です。

しかし、オートバイの場合では、トレール(量)と「直進安定性」は 台車の場合とは状況が異なるのも事実です。

 

【 トレール(量)が 0 でも 直進安定性 は確保できる

では、同じ台車でも少し形を変えた (C) の形式を見て下さい。

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上図 (C) の形式では、トレール量は 0 ですが、キャスター角がついている為に、高い直進安定性が保たれています。

イメージとしては、自転車のホイールを棒を使って転がす “ 輪回し ”(タガ廻し)の直進安定性と良く似ています。

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つまり、キャスター角がつけてあれば直進安定性は保たれ、その場合にはトレール(量)は 0 でも真っ直ぐ進めるのです。

だから、「アメリカンタイプのオートバイは直進安定性を高めるためにトレール量が大きい」というのは “ 神話 ” だと言えるのです。

 

< 雑考 >

・・ そもそも、比較的低速での走行が多い アメリカンタイプ が「 直進安定性 」が大切で、超高速で走る事が前提の レーサーレプリカタイプが 直進安定性 が少なくても良いという様な考えはどうでしょう?

 ・・ どんなタイプの車両であっても、「直進安定性」は一定以上確保されるべきですし、同様に「旋回性」も一定以上必要です。まして、普通の人が乗る一般車両であれば、安全性や実用性、快適性を高い次元で求められるので、尚更、車両のタイプに関係無く、「直進安定性」や「旋回性」は十分以上に保たれているのです。

・・ 違いがあるとすれば、その性質・特性・性格にあるのです。

 

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次回(その3)は、【 実は! オートバイには大切なトレール(量)】(仮称)という項目名で、自動車や競技用車いすとの比較を交えて、オートバイで必要なトレール(量)の役割を解説する予定です。

乞う、ご期待 です。

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