世界各国の感染状況は、人口あたりの新規感染者数【感染密度】で比較しなければ、その被害の深刻さの違いは見えません。【感染密度】は、人口1億人あたり日別・新規感染者数を一覧表で示し、深刻度が高くなっている程に欄を濃い色で塗り分けています。
New infection case per popuration by country and day
4/8~4/14 の間の一週間で、世界全体での一日あたりの新規感染者数が 約 10万人増えています。この増加の最大の要因はインドでの感染拡大で、インドではそれ以前よりも 一日あたり7万人ほど新規感染者が増えたのが世界全体での新規感染者数を増加させた最大の要因です。
ただし、急激な新規感染者が増加しているインドが最も深刻な状況の国かと言えば違います。人口 13億人超えの国だからこそ、【感染密度】が高まりに応じて新規感染者数も大きく変化するからです。国民が面している感染リスクや医療機関の負担レベルは【感染密度】を交えて考える必要があります。
世界全体の変化を【感染密度】で見れば、“変異株” の台頭と共に感染が拡大している傾向は続いており、新規感染者数の増加数で言えば、米国とカナダの北米両国とトルコやイラン等の中東諸国だと言えます。
なお、記載している国順は、A表では主要な国を、その他 B~H表にはラフですが地域別に分けています。また、情報出典元の OCHA とは「国際連合人道問題調査事務所」の事です。
【 欧州 】
例外的に感染抑制に成功して継続させている国が英国とアイルランドの両国です。この両国共にアストラゼネカ社製のワクチンの導入を積極的に進めて一か月前の 1/2レベルに留めています。が、その例外的な【感染密度】でさえ、現在の日本よりも高い事は忘れてはいけません。
一方、国民の不満が噴出している事が世界的に報道され、政権維持に躍起になっている フランスとドイツはロックダウンや高機能マスクの義務化などの対策をキメ細かく行なっていますが、【感染密度】の観点から言えば現状維持を実現しているという事になります。ワクチンの供給問題から完全性への懸念問題からEU各国が揺れている中、フランスは昨年末からのプロジェクトが徐々に実を結びつつあり、国内製薬メーカーのワクチン開発を一旦断念しても、海外メーカーのワクチンの受託生産拠点を 4ヶ所作り、積極的なワクチン接種計画が始まっている事が報道されていますから、4月末までには【感染密度】にも変化が見られると期待できます。
その隣国・ドイツは芳しくありません。年初はキメ細かな規制と臨機応変な変更で欧州の中では優良国に見えたものの、“変異株” に翻弄されてたか、次期首相問題に目を向けすぎたのか、最近の2週間は明らかに悪化しています。
しかし、ドイツ以上に苦労している国は、EUの盟主国のベルギーとオランダ、そして チェコやオーストラリア、ラトビアとリトアニア(北海三国の内 エストニアだけが例外的に抑制)など、前週までと同様に高い【感染密度】が続き、有効な対策が無くて医療機関や国民の不安は増大の一方だと懸念されます。
東欧からバルカン半島諸国を見れば、唯一、感染者数の規制に成功しているロシアを除いて、ポーランドからルーマニア、ハンガリー、セルビアやブルガリア、ウクライナにかけて、前週までの高い【感染密度】のまま一向に変化していません。 変化しない事は拮抗している事とは限らず、PCRなどの検査可能数に限りがあれば同様な現象になる為、これらの国々の状況は更に深刻と言えます。
【 中東 】
この地域で唯一、感染抑制に成功した国は、世界の中で経済的・政治的に独特の位置を占めるイスラエルです。昨年、中東アラブ諸国との外交戦略の転換時、既に感染拡大の可能性を察知したのか、一足早くワクチン入手の手配に成功して、一気の接種を行なった成果が表れていると思われます。
しかし、イスラエルの抑制とは対照的に陰に隠されてしまった国があります。それは実行支配を強めている隣国・パレスチナで、全世界の中で最悪に近い【感染密度】を続けているにも関わらず、感染者数だけに注目しがちなメディアの報道の網から漏れ、自由な物品の流入が大幅に制限されている地域がある事に世界はもっと目を向ける必要があります。
また、対照的なのは パレスチナだけではありません。ヨルダンやレバノンも同様に高い【感染密度】が続き、クウェートやバーレーン、そしてイランやイラクまで深刻な状況が続いていますが、特に深刻な国は トルコです。トルコの【感染密度】は、この一週間以上の間、60,000 を超える値にまで上昇して、世界最悪のレベルに陥ったままですが、中東盟主の意識か外交上のプライドか、トルコの人々が心配です。
なお、一時は イスラエルに次いで高いワクチン接種率で注目された UAE は、ようやく効果が表われてきたのか、ワクチン製造会社の違いで遅れただけなのか、少しずつ抑制方向への変化を見せています。
なお、サウジアラビアはロジア同様に 感染者数がよく規制されていて大きな変化はありません。
【 北米 】
米国とカナダの両国は、ワクチン接種と感染抑制の難しさを表している典型例だと言えるでしょう。
よく知られた通り、米国には 新型コロナウイルス用に認可されたワクチンを開発した会社が数社あり、新大統領の公約通りに積極的な接種を展開させ、一か月前には抑制に成功して更に進むかと思われていました。が、ここ3週間で少しずつ状況が悪くなってイランと同レベルになっています。
それに合わせるかの様に カナダも抑制には成功できていません。一時は、国民に必要な量の数倍にも上るワクチン手配を行なっていた事に首相が弁明に追われる程、ワクチンの入手と接種は世界各国の中でも優等生だったのですが、“変異株” の影響か、ワクチン接種と感染抑制が必ずしもリンクしない事に世界各国の研究機関は協力して人類の為に力を合わせる必要があります。
【 中南米 】
北米での様子とは一転して、メキシコなど中米諸国は比較的感染抑制の成功が続いています。昨年の一時期は高い【感染密度】で心配された パナマやドミニカなどの諸国は現在の英国レベルに留まり続けており、ハイチやバハマ、ドミニカなどの諸国は、検査インターバルの違いがありますが、それ以上に安定した状況を示しています。
一方、南米になると状況は全く異なります。頻繁にメディアが報道するブラジルがその代表格で、その大統領の発言や政策が原因で多くの人々が感染して亡くなるというパターンの報道が目立ちます。確かにブラジルでの被害は深刻ですが、南米で最も深刻な国ではなく、【感染密度】で見れば イタリア以上でフランス以下、ドイツと同レベルで、それらの国々より人口が 2.5倍ほどの 2億人の国の為に殊更に多くの感染者や死亡者数になっている側面がある事も忘れてはいけません。
そんなブラジル以上に深刻な国々は、その隣国である パラグアイやウルグアイ、そしてアルゼンチンなどの諸国で、それらの国々では世界最悪レベルの【感染密度】が続いている事を世界は知るべきです。
【 東アジア 】
この地域で最も注目すべき国は、最初に述べた国・インドです。人口 13億人超の国の為、その感染者数や死亡者数が世界的なトピックとして安易にメディアが報道していますが、そんな報道だけに目を留める事は危険でしょう。インドが世界的に果たしている役割への影響を心配すべきだからです。
それは、ワクチン受託生産国として世界的によく知られているからです。元々、ジェネリック医薬品を積極的に製造する事を進めている事で知られた同国は、今回のワクチン製造の面でも世界的な貢献度が高いのですが、自国内での政情不安や外交的な政策等によってワクチン供給体制に変化が起きる事を世界的には心配されているのです。
ただし、インド国内の感染予防に最善を尽くすべき事は間違いの無い事で、他国が自国の利益の為に「世界的に見て、それは間違っている」などと人道的に誤った見方に陥る事の方が、今年だけでなく今後も続くワクチン需要を考える上からも、良くない事です。他の東アジア諸国は、日本も含めて、世界的に見れば全体的に感染は抑えられています。
【 アフリカ 】
以前から数多くの感染症で悩まされ続けたアフリカ諸国ですから、世界各国もアフリカでの感染拡大を懸念していましたが、殆どの国で感染の拡大は抑えられています。
なお、記載している国順は、A表では主要な国を、その他 B~H表にはラフですが地域別に分けています。また、情報出典元の OCHA とは「国際連合人道問題調査事務所」( https://www.unocha.org/ )の事です。
New infection case per popuration by country and day A~H
Source:#OCHA ( https://www.unocha.org/ )
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