世界各国の感染状況は、人口あたりの新規感染者数【感染密度】で比較しなければ、その被害の深刻さの違いは見えません。【感染密度】は、人口1億人あたり日別・新規感染者数を一覧表で示し、深刻度が高くなっている程に欄を濃い色で塗り分けています。
世界全体での一日あたりの新規感染者数は、昨年12月のピークを過ぎて一旦は減少していましたが、2月以降は拡大が続き、それ以降 “変異株” や 「インド」の話題の高まりと一緒に 感染者数は増え続けています。しかし、【 感染密度 】で世界各国の状況を見れば、メディアが簡単に報道する程に状況は一様ではなく、地域別・各国別に 感染の状況や深刻度は異なる事がはっきりとします。
例えば、インドは “ ダブル変異型ウイルス ” と 新規感染者数の多さで注目されていますが、その【 感染密度 】で見える状況はそれと異なり、オランダやトルコ の【感染密度】の 半分程度に過ぎません。 従って、実際の深刻度は医療状況によって異なりますが、インドの火葬場の映像を出して「深刻だ」という報道は、宗教的な偏見を含んだ正確な報道とは言えないでしょう。
この【感染密度】を通して見れば、国によって報道体制の違いや慣習の違い、世界的な影響力や感染報告への報道規制の有無など、様々な事が透かして見えてきますが、一番肝心な人々の健康と命への関心を無くしてはいけません。
なお、記載している国順は、A表では主要な国を、その他 B~H表にはラフですが地域別に分けています。また、情報出典元の OCHA とは「国際連合人道問題調査事務所」の事です。
New infection case per popuration by country and day
【 欧州 】
ここでは、西欧から東欧、バルカン半島諸国まで範囲の国の傾向を見ますが、ここ 3週間、ほぼ同じ傾向で推移しています。
“ 変異株 ” によって 2月以降感染が広がり、外出規制を含む様々な行動規制を行なってきたフランスやドイツなどの西欧諸国は、最近になって、ようやく減少の傾向を見せていますが、それでも【感染密度】は世界平均の 2倍以上、30,000 を超える値を超える深刻な状況で、一足先にピークを過ぎた英国の【 感染密度 】の 10倍の深刻度によって明白なコントラストがついています。この点については、一時は 現在のフランス以上に深刻な状況に陥っていた事を考えれば、英国の政治体制支持率は スコットランドを含めて暫く安定するでしょう。
一方、フランスやドイツ、そしてイタリアなどでは、規制に対して不満を持つ人々によって暴動が繰り返されており、ワクチン手配の件を含めて政治体制の安定には注目が必要な状況です。また、同じ西欧と言っても、オランダやベルギーは未だに高い【 感染密度 】が続いています。ただ、東欧の ポーランドやルーマニア、チェコでは やや減少の傾向を見せています。
ただし、バルカン半島諸国では変わらず深刻な状況が続いており、特に クロアチアでは【 感染密度 】が 70,000 を超える様な値が続いていて、世界的に注目や支援が集まり難い地域の為、セルビアやボスニアヘルツゴビナなどの多くの人々の状況がとても心配です。
【 中東 】
他国に先駆けてワクチン手配を進めて、人口あたりのワクチン接種数で他国に大きく差をつけているイスラエルでは、1月中旬に 110,000 を連日超えていた【 感染密度 】を 1/100 の 1,000 程にまで低下させ続けています。
しかし、同国の感染拡大の一因になったと考えられる、昨年の 国交樹立折衝の相手国・UAEでは、人口あたりのワクチン接種率 2番手の高さにも関わらず、イスラエルの様に感染抑制を収めていません。ただ、ここ 二週間ほど、抑制へと進んでいますが、近隣諸国の バーレーンやクウェート、カタールでは、昨年中旬以降、高い【 感染密度 】が続いて心配されます。特に、バーレーンでは【 感染密度 】が 世界最悪レベルの 60,000 を超えるまで拡大をし続けており、その 1/10 の【 感染密度 】が 1~2週間続いただけで 医療崩壊が心配される日本と比較して、宗教的な壁があるとは云え、大変に心配される国です。
また、トルコとイランでは、昨年12月の感染ピーク以降、一時は低く抑えられていた【 感染密度 】が 2月から3月にかけて “変異株” の影響と見られる拡大が表われ、現在も高い数値を続けています。が、特にイランでは感染に関して世界各国へのアピールが乏しく、同国民の状況が懸念されます。
そして、イスラエルの管理体制下にあるパレスチナ。隣国のヨルダンやレバノンでは、一時の高い【 感染密度 】が減少の傾向を見せていますが、隔離された人々や難民の方の多い地域の為、正確に把握されていない感染者の存在も含めて、懸念が尽きない諸国です。
【 北米 】
米国とカナダの両国は、ワクチン接種と感染抑制の難しさを表している典型例そのものです。米国は新大統領がワクチン接種数を公約に掲げて、公約を遥かに上回る接種を実現させて、二週間前からようやく【 感染密度 】の減少として効果が表われています。が、カナダは状況が少し異なります。世界的に批判を受けた程に数多くのワクチン購入を確保したにも関わらず、国民 100人あたりの接種回数が 33 回/100人 と 米国の 半分程度に留まり、ドイツ並みの【 感染密度 】に低下傾向はありません。
( 接種回数データは、Our World in Data から、4月26日時点 )( 同日付けの日本の 100人あたりの接種回数は 2.55 回/100人 )
【 中南米 】
この地域は、中米と南米の【 感染密度 】で見ると、一定以上のコントラストが存在している様に見えます。
先ず、メキシコやパナマなどの中米諸国は、多少高めの数値を続けている キューバを含めて、北米諸国よりはずっと低い【 感染密度 】を継続させています。
一方、南米諸国では状況が異なります。頻繁に報道されるブラジルだけでなく、チリやペルー、パラグアイやコロンビアなどでは 20,000 や 30,000 を超える高い【 感染密度 】が続き、特に アルゼンチンやウルグアイでは 50,000 を超える【感染密度】が続くなど、世界で最も 医療体制と国民の健康と命が危険性が高い国の状態が続いています。しかし、メディアは 新規感染者数や死亡者数だけに注目する為、これらの国の人々の状況を計れずにいます。仮に、最後まで感染被害が残る地域を問われれば、このブラジルを除く南米諸国になる可能性が高いでしょう。
【 アジア・大洋州 】
この地域で最も注目されている国はインドです。それも、単に新規感染者数や一部の医療体制に的を絞ったメディアによってイメージが作られていますが、それは正しい見方とは言えません。
今後も注視が必要ですが、現在の【 感染密度 】は 20,000 程と決して低くはありませんが、西欧諸国と較べると 高いとは言えません。
このインド以上に人々の状況が心配される国が インド洋の諸島国・モルディブ です。インド以上に高い【 感染密度 】を記録し続けた同国は、この 二週間で一気に状況が悪くなり、80,000 を超える【 感染密度 】を記録するなど、明らかにクラスターが発生している状況が伺え、世界最悪レベルの状況に陥っています。
一方、他のアジア諸国は 日本を含めて一様に低い数値を記録し続けて、一定の抑制が成功している国が多いのですが、最近になって 注意が必要な程に拡大を見せている国があります。それは、インドの隣国・ネパールで、インドと同時期から拡大傾向を示している事からして、インドで確認されている “ダブル変異型” の ウイルスによる影響と推察されます。
また、オーストラリア と ニュージーランド、そしてその近隣の 諸島国では 一定以上の抑制を成功させていて、特に、オーストラリアとニュージーランドとは、二週間前から、感染検査などの規制無しでの人的交流を開始するなど、世界で最もウイルスとは縁遠い地域の象徴となりました。ただし、“変異株” の研究やワクチン接種が進まない限り、他国との交流は制限が続き、“ 変異株 ” の伝搬次第では改めての規制措置導入へと移るでしょう。
【 アフリカ 】
以前から数多くの感染症で悩まされ続けたアフリカ諸国ですから、世界各国もアフリカでの感染拡大を懸念していましたが、殆どの国で感染の拡大は抑えられています。
なお、記載している国順は、A表では主要な国を、その他 B~H表にはラフですが地域別に分けています。また、情報出典元の OCHA とは「国際連合人道問題調査事務所」( https://www.unocha.org/ )の事です。
Source:#OCHA ( https://www.unocha.org/ )
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