GRA 公式ブログ

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『 間違ったリアの車高調整 』 / リアの車高調整・動画 3

 
『 間違ったリアの車高調整 』

オートバイの専門誌やWebサイトでは、「 リアの車高を高く設定して、機敏な運動性能を狙ったセッティングがしてある 」とか、「 リアの車高を低く調整して、足つき性能を向上させている 」などと書かれているのをよく目にする。
しかし、これらの文章を書いた者は、車高調整の本来の目的を全く知らないか、或いはライダーの安全を完全に無視している事を私達は知っておかなければなりません。

つまり、リアの車高を乗車時のスイングアームの垂れ角だと考えれば、オートバイの安定性と適正な運動性能を保障するリアの車高(スイングアームの垂れ角)は、実は、たった一つしかない事が明らかです。

 

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図で示したのは、リアタイヤが駆動されて回転し、そのアクスルシャフトがスイングアームを前方へと水平方向に押し、その力によって車体が前方へと進む力と スイングアームを車体に固定しているピポット部を上方へと押し上げる力が働く様子を示しています。
そして、同時に、車体を前方へと押し進める力(加速度)によって、車体荷重が前方から後方へと移動して スイングアームピポット部を押し下げる力(リアサスペンションを沈めようとする力)が働く様子を図で示しています。
     
この時、スイングアームピポット に対して上下方向に働く力に注目すれば、どちらかの力がもう一方の力よりも大きいと、どちらの場合でもリアサスペンションの作動を妨げる力として働き、リアタイヤのグリップが適正に保たれなくなります。従って、リアの車高調整の目的は、スイングアームの垂れ角を調整して、ピポット部に働く上下方向の二つの力が等しくバランスする様にする事です。
それによって、リアサスペンションの作動を妨げる力は働かず、バンクさせて加速している場面でも、路面の凹凸やギャップによってリアタイヤのグリップ力を適正に保つ事が可能になるのです。そして、それを実現させる適正なリアの車高( バランス点 / スイングアームの垂れ角 )は一つしかない事も正しく理解して調整を行なう必要があるのです。

 

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特に、バンク中に加速する際、加速する力によってリアサスペンションが適正に作動しない状態になれば、必ずリアタイヤのグリップ力は失われ、最悪の場合には転倒を招く事になりますので、リアの車高調整はバンクさせた状態で加速した時のリアタイヤのグリップ感や挙動を確認して行なう必要があります。
つまり、オートバイのリアタイヤのグリップを常に適正に保ち、どんな場面でも安全を保つ為には、必ずピポット部での力のバランスを取るためのリアの車高調整を行なう必要があります。そして、バランスがとれる調整位置を無視して、高目の調整をしたり、足つき性の為に低く調整する事は安全を無視した間違った行為なのです。






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