GRA 公式ブログ

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最適なダンパー調整とは、 / オートバイとライダーのための “ クリニック ” より

     
『 誤解の多い、ダンパー調整 』

最近では、市販オートバイの多くで、ダンパー(減衰力)調整ダイヤルがついた前後サスペンションが最初から装備されていて、ダンパーの調整に関心を持っている人も増えています。
   
それに合わせて、「 〇〇〇(車名)の リアの伸び側(Tension)のダンパー調整は **(ダイヤル数)で、縮み側(Compression)は ・・・がベストだ!」など、ダンパー調整本来の目的を無視した記事・投稿も多くなっています。更には、プロと称するライダーが、「 △△△(車名)のダンパー調整は、高速道路を走る時は ** で、市街地走行では ***、山道(ワインディング)を走る時は **** だ 」などと、ダンパー本来の働きさえ理解せず、一方的に危険な情報を発信している例も少なくありません。

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そのため、ダンパー調整機構が備わった車両を購入した人や、高額な社外製サスペンションユニットを装着した人の多くは、調整への関心や機会はあるものの、車両メーカーやサスペンションユニットメーカーから適切な調整方法を知らされず、一方的で誤った投稿や情報の中で彷徨い、高価な買い物の真価を発揮できずにいる状態だと言えます。

しかし、適正なダンパー調整は、適切な確認走行用のエリアと適切な確認方法を守れば、意外と簡単に最適な調整が可能です。




『 ドアクローザとダンパー調整 』

サスペンションの働きを説明する際、時々、話題にするのが「ドアクローザ」です。ドアクローザとは、扉の上部によく取り付けられている装置で、出入りの為に開けた扉を自動的に閉める役割の装置です。
   

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ドアクローザの仕組みはオートバイのサスペンションと同じで、スプリングとダンパーがセットで組み込まれています。そして、ダンパーはドアが閉まる時の動き(速度)を最適にコントロールしているのですが、殆どのドアクローザには “ダンバー調整ダイヤル(弁)” が備わっている事は知られていません。

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その上、オートバイでは一般的ではなかった時代から、ドアクローザには既に調整弁が備わっていて、少ない機種でも1個、多い機種では 3個の調整弁が備わっているのが一般的なほどに、ドアクローザのダンパー調整機構は緻密で、調整機構の重要性と必要性がが高く認められているのです。


  

『 最適なダンパー調整は 』

最適なダンパー調整を、ドアクローザの場合に当て嵌めて説明してみましょう。
開けたドアが閉まり切る直前までは、スプリングの力で閉まろうとするドアの動きを強くは抑えず、閉まる直前になってから制御を強める様にする調整が最適でしょう。つまり、開けたドアが閉じていく時の速度は危険でない程度に少し早目にして、閉まり切る直前には大きな衝撃や音が出ない様に速度を抑えて、かと言って、完全に閉まり切らない様なダンパー調整は良くないのです。
    

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実際に、ドアクローザのダンパー調整を行なってみると理解できますが、理想的なドアの閉まり方を求めると、そのダンパー調整には微妙な調整が必要で、最適(最善)の調整値は一つしかないのです。その上、同じドアとドアクローザでも、家や部屋が異なると、最適(最善)の調整値は同じでない事にも気付くでしょう。

実は、オートバイのダンパー調整もドアクローザと基本は同じです。
[伸び側](Tension)か「縮み側」(Compression) のどちらか一方の調整ダイヤルを、最弱から最強の範囲へ変更しながら確認走行を行ない、車両の挙動が “重い” から “軽い”  またはその逆へと変化する調整値を探し出すだけです。その挙動が変化する調整値を基準にして、その調整値か 1クリック分ソフト側(弱い)へ調整するのがお勧めです。 なお、確認走行の方法は、安全が確保されたエリアの中で、低速・時速 10㎞程で真っ直ぐ走り、ブレーキを一切使わないで、決めた地点で左右どちらかに 90度 旋回(曲がる)という簡単な確認走行がお勧めです。そして、使用車両やライダーによって最適な調整値が異なる事も同じです。

ただ、一番の問題は、ドア以上に人の命に関わるダンパー調整なのに、その最適な調整方法と調整場所を責任を持って提供しているメーカーが一つも無い事です。そこが、ドアクローザの製造メーカーと大きく異なり、オートバイ業界のとても残念な点です。
  
  






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