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ホンダ “Eクラッチ” に想う / Thoughts on the Honda "E-Clutch"


クラッチレバーの操作無しで変速が可能で、発進時でさえ不要を謳う、ホンダ「Eクラッチ」について解説と想いを書きます。

Commentary and thoughts on the Honda "E-Clutch", which claims to allow gear shifting without operating the clutch lever, even when starting off.

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先ず「Eクラッチ」の制御に使われる入力信号とアクチュエーター(モーター駆動)の概略図を紹介します。この制御を行なう為に、新たに「シフトペダル荷重」とトランスミッション内部に「カウンターシャフト回転数」センサーが加わえられ、更に「クラッチ切断信号」も従来とは異なるセンサーになっている可能性があります。これら、数多くのセンサーからの信号を同時にコントロールユニットへ伝え、その走行状況を判断して、クラッチ制御ユニット(MCU)を制御している様です。

  
クラッチ(エンジン側)は、クラッチレリーズシャフト(クラッチレバーシャフト)を 2分割にして、中間部分にモーターで制御された “カム” が介入してクラッチ操作を代行する仕組みです。そして、モーターが二つあるのは、恐らく、ギアのバックラッシュを考慮して、逆方向への制御を担わせて、作動不良や違和感を排除する為でしょう。また、カウンターシャフトの回転数まで検知させているのは、エンジン回転数とギアポジション信号だけでは正確な操作が実現しなかったからでしょう。
     
確かに、技術の実用化という意味では価値があるかも知れませんが、“統合制御” へと進む中での過渡的技術で、現段階ではメリットは小さいと思われます。
“統合制御” とは、電子制御のスロットルとインジェクター(燃料)、そしてこの「Eクラッチ」を連動させて、あたかもライダーを助けるかの様に、オートバイの駆動操作系全般をコントロールする考えです。そこでは、発進時にアクセル全開にするだけで全力加速と自動変速を自動で行なったり、ハーフスロットル(アクセル)のままでも、道路の勾配やコーナリング走行に応じて、自動でスロットルと変速を制御して、何事もなく走り続けられる様になります。
  
この “統合制御” は 四輪車では常識となっている技術ですが、電動車(EV)の制御よりも明らかに複雑で、燃料と空気を媒体として制御を行なう内燃機関の為、必ずタイムラグがあります。その上、仮に、オートバイも電動化へと進むならば、基本的には変速機は無いので、”あだ花”的な技術に終わるでしょう。
    
現在クラッチ操作に一切の不便を感じず、また、走り始めたらクラッチレバーは使わず、エンジン回転数を合わしてギアチェンジを行なっている人にとっては、「Eクラッチ」は重く、高額になり、損耗や壊れる箇所が多くなり、直すのが面倒になるだけのシステムで、メリットを感じません。 また、「Eクラッチ」は安全装備でもなく、環境対策の技術でもなく、時流に沿わない事に技術と資源を使っていると言えます。
   
僕としては、オートバイはシンプルな構造のままでいて欲しいと思います。


 

 
The following is a schematic diagram of the input signals and actuators (motor drive) used to control the Honda 'e-clutch'. In order to perform this control, a new "shift pedal load" and "countershaft speed" sensor have been added, and the "clutch disengagement signal" may also be a different sensor than before. These numerous sensors seem to work together at the same time to convey the driving status to the control unit, which in turn controls the clutch control unit (MCU).
   
The clutch (engine side) has a clutch release shaft (clutch lever shaft) that is split into two parts, with a motor-controlled "cam" intervening in the middle part to operate the clutch on its behalf. The reason there are two motors is probably to take into account the backlash of the gears and to eliminate any malfunctions or discomfort by having them control the clutch in the opposite direction. The reason why even the countershaft speed is detected is probably because accurate operation could not be achieved with engine speed and gear position signals alone.
  
 As for me, I would like motorbikes to remain simple in construction.




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